エジンバラ公演記 by管理人
photo by C.Matsumura

8月11日エジンバラ到着
ふーっ。長旅でした。今回は関空〜シンガポール〜ロンドン〜エジンバラの南回りルートです。空港での待ち時間を含めると延べ31時間かかったのです。あまりの長さに体内時計が一週して日本時間に戻ってしまいかえって時差ボケがなくなりました。お昼にエジンバラ到着後ホテルへチェックイン、ランチを済ませて早速劇場のプロデューサー、ジュリアン氏へ挨拶に伺います。想像よりも若く感じの良い人で一安心。聞けば師匠のパフォーマンスを気に入ってくださり強力にマスコミに前宣伝をしてくれていたのです。おかげでイベント関係のメジャー雑誌(日本でいうぴあみたいなものです。)が大きく取り上げてくれているではありませんか。このおかげで初日の前売りは完売。全4公演中3公演は多数のメディア関係者筋から来場の連絡があったらしいです。思わず気合いが入ります。最高の環境で公演をしたいという重いに答えて。我々の細かいリクエストにもいやな顔ひとつせず聞き入れてくれたジュリアンに感謝です。
機内で英字新聞を片手にくつろぐ師匠と癒し系漫画家T画伯。 同行スタッフ一同とヒースローで記念撮影
会場前の看板。自分の名前を確認。 プロデューサーからの説明に耳を傾ける。


8月12日(公演初日)
早朝からリハーサルです。我々の前後にもショーが行われるので、公演前後の10分間で高座の準備と後片づけをせねば なりません。シカゴの劇団から木製の台を4つ借り、ホテルからは長テーブルを3つ借りて高座をつくります。実際やってみると結構な力仕事です。何度も繰り返すうちにおのずと役割分担や効率的な方法が掴めてきました。音や照明の調整なども含め予定の2時間はアッという間に過ぎていってしまいました。
午後からはビラ配りの宣伝。今回我々はちんどん屋に挑戦しメインストリートを練り歩きました。反応は上々です。さて初日の入りは 如何に・・・。
宣伝部隊です。ビラ配りより記念撮影を頼まれる方が多かった!? 会場入りです。
会場内に貼られた雑誌の記事に見入る。 劇場が作成したパンフレットです
 果たして心配だった高座のセッティングもスムーズに運び、午後6時10分記念すべきエジンバラ初日の幕が開きました。お客さんは超満員。
当日券も完売でした。ショーの構成は簡単な落語の説明を行ったあと、英語落語で「動物園」、紙切り、アリスの順です。お客さんの反応も上々でプロデューサーや他のコメディアンからも次々に呼び止められ「面白い絶対成功する」と声をかけられました。初日としては快調なスタートでした。


8月13日(公演2日目)
 朝からチラシを貼る。メインストリート(通称ロイヤルマイル)はフェスの期間中歩行者天国となっており、その両脇に並ぶ柱は宣伝ビラ貼り放題なのである。最初は遠慮気味に貼っていたが、貼っても貼ってもすぐまた誰かがその上から貼っていくので、よく持って2時間程だ。そのシステムに慣れてくると皆大胆かつ狡猾に貼るコツを覚えた。日本で職を失っても皆チラシ貼りで雇ってもらえそうなほど手際が良くなった。
これがメインストリート。朝から賑わっています。 とにかく貼って貼って貼りまくります。
しかし1時間後にはこの状態。上の方は跡形もなく。辛うじて最下部のみ残っています。 何とか頑張ってます。
 ちんどん作戦も相変わらずの好評だった。松田さんデザインのチラシも好評で受け取った人が興味深くこちらへ質問してきたり、そのチラシを見てわざわざこちらへ戻ってきて取りに来る人が何人もいた。心配された客足も大入り満員で一安心。心なしか高座のセッティングと後片づけも段取りが良くなって来たように思えます。


     

8月14日(公演3日目)
 折り返し地点の3日目。今朝地元の新聞"The Scotsman"に初日のレビューが掲載された。イギリスの新聞は内容が良ければベタほめ、悪ければかなり手厳しい批評を書かれる。果たして批評は前者であり、ホッと胸をなで下ろした。街でチラシを配っていると、「チケット売り場に行ったのにもう売り切れよ!どうすれば良いの!」と詰め寄られた。今日も札止め。今日から親子連れのお客さんが多くなり始めました。これも新聞のレビューやちんどん作戦の効果かも知れません。
もぎりで奮闘するT画伯 お客とのコミュニケーションもバッチリ
パントマイムを使って話を展開。 意外と若い女性のお客さんも多かったのです。
 ショーの内容を一部変更し、先だってアイルランド公演で使ったパントマイム落語や玉すだれなどを取り入れる。初日の堅さも取れ始めアドリブも冴え渡ります。反応も最高。終了後、親子や若い女性など幅広い年齢層の方々からサインを求められる。プロデューサーの妻子も見に来ていたようで「俺が見に行った初日より面白くなってるらしいな!」とほめてもらった。ブロンドの美女が声を掛けてきたので鼻の下を伸ばしていると南アフリカのお笑いプロダクションのプロデューサーだった。ケープタウンで開催する地球フェスティバルへの出演依頼だ。この後パブに1パイント(586ml)グラスが林立したのは言うまでもない。ラガー、ギネス、ハーフ&ハーフ・・・どこまで行くんや!まだ翌日があるんだってば!

8月15日(最終日)
 この日の舞台がインターネットライブ配信される事が急遽決まった。つまりパソコンさえあれば世界中どこにいてもパフォーマンスが見れるという訳だ。日本の知り合いにも連絡しよう・・・と思ったが時差を考えるとステージ開始は日本時間の午前2時になるので遠慮した。ビラ配りも高座の設営も今日が最後だ。T画伯が1分間の一筆書きで似顔絵を書きながらビラを撒いて宣伝する。興味を持った人たちがたくさん集まり用意していた2冊分のスケッチブックはアッという間になくなってしまった。気がつけばビラを配るはずがいつのまにか似顔絵に見入ってしまっていた。一応の成果を出した達成感と英語のパフォーマンスでの笑いのツボを肌で感じ始めた安心感からくるリラックスムードと最終日に舞台がインターネットでライブ配信されるというプレッシャーがみんなに心地よい緊張感を与えている。
開場を待つ人の列 チケットはこんな感じです。
最後の瞬間です。 チーフプロデューサーも大いに喜んでおりました。
 実は4日間のうち今日が一番お客の出足が鈍かった。開演時点で約6割くらいだった。が遅れてぞろぞろと入って来る人が多く、結局開演10分後にはいつものように客席はギッシリと埋まった。イギリスで何の実績もない日本のコメディアンのショーにここまで興味を持って下さったお客さんに素直に感謝した。そしてこれが口コミで広がるフリンジの持つ魅力なのだと感じた。終演後チーフプロデューサーから早くも来年の打診があった。100人以上の会場で最低1週間〜10日はやって欲しいというこれまた大変有り難い話だ。終わってみればあっという間の4日間だった。高座の設営、後片づけ、ビラ配り、チラシ貼り、切符のもぎりそしてお客さんの笑顔と笑い声・・・手作りの味がした。エジンバラ・フリンジフェスティバル、そこには確かに舞台芸の原点があった。鶴笑師匠お疲れさまでした.最後に、今回お世話になった高宮さん(かきわりの絵、もぎり、そしてベストムードメーカー)、松村さん(ビデオ、写真撮影、下町の笛吹童子)、阪野さん(地元芸人と路上パフォーマンスで共演の国際派工芸人)、笑工房小林代表(出発の日関空でお土産に柿の葉ずしを持たせてくれた下町のおやっさん)、そしてチラシと垂れ幕のお洒落なデザインをしてくださった松田さん(京橋在住のお茶目なデザイナー)本当にありがとうございました。